写真を撮り始めた時、最初からシャッター速度を重視している人はあまりいません。
絞りやISO感度を優先する撮影が多い為『ブレなければ良い』という思考になるからです。
ですが、シャッター速度を理解して使いこなせるようになれば写真の可能性は格段に広がります。
目で見ている世界とはまったく別のものを撮影する事が可能になるからです。
もちろん普段の撮影で手ブレをしないというのも大切です。
手ブレの防ぎ方をはじめ、シャッター速度の基本から応用まで学び、一歩先の撮影で他の人と差をつけましょう。
最後にプロ目線のシャッター速度の使い方をお伝えします。プロのようにバリエーション豊富な写真を撮りたい方ははぜひ最後まで読んでみてください。

最後に【プロ目線の考え方】を伝えているよ。
シャッター速度の調整は『動きの表現の調整』と考える
動いているものを撮影する時、ブレないようにとにかくシャッタースピードを速くしていませんか?
間違いではありませんが、その撮影方法だと単に動きを止める写真になるだけです。
色んな可能性に自ら蓋をしてしまうので、被写体に合わせてシャッター速度を選ぶ事を意識することが大切です。
動きを止める表現をする
スポーツなど、動きが速いものを撮影する時は、基本的にシャッター速度を速くして撮影します。
動いている中の『瞬間を切り取る』表現で、人の目で捉えきれない所まで写す事を目的とします。

動きを止める場合は、1/500秒 ~ 1/2000秒 あたりを想定しておくとよいでしょう。

シャッター速度の目安をあらかじめ想定しておきましょう。
動きを出す表現をする
動きを止める表現とは反対に、動きを出す表現というと『滝の写真』が代表的でしょう。
シャッター速度を遅くして水の動きを『流れる』という表現をします。

動きを出す場合は、1/50秒 ~ 数秒間 あたりを想定しておくとよいでしょう。

この場合の注意点は、全体がブレない事が必須です。
シャッター速度の基本
思い通りの表現ができるようにまずは基本を理解しましょう。シャッター速度の基本は簡単です。下の図でまずはイメージしてください。

シャッター速度は『1/○秒』で記されます。
数値が小さい(1/60秒)ほど動きが出やすく(ブレやすい)、大きい(1/2000秒)ほど動きを止める(ブレにくい)事ができます。※ここでの数値は目安です。必ずこの数値という事ではありません。
また、シャッター速度はブレなどの他に明るさにも影響してきますので下の表で確認してみましょう。


数値が小さいほど写真が動く(ブレる) 大きいほど写真が止まる(ブレない)と簡単に覚えよう。
意図したブレと意図しないブレ
基本的にブレは失敗と思いがちですが、決してそうではありません。
『意図したブレ』は自分の思い通りに撮れたという事なので成功です。
失敗したブレというのは『意図しないブレ』、つまり動きを止めようとしたのに止める事ができなかったブレ写真の事をいいます。
例えば下の図のように、小走りで動いているネコの動きを止める撮影をしようとします。

シャッター速度を意識して1/500秒(速く)で撮った場合と、シャッター速度を意識せず、1/60秒(遅く)で撮った場合を比較してみると下の図のようになります。

ネコの動きを止めようとして撮影したのにブレてしまったという『意図しなかったブレ』(右の図)は失敗となります。
逆に、下の絵のような皿回しの動きを出したい時に、ちゃんとお皿が動いているように撮れたら『意図したブレ』なので成功なのです。

ブレの種類
基本を学ぶと同時に『意図しないブレ』で失敗しないようにブレの種類を覚えましょう。
ブレの種類は【手ブレ】と【被写体ブレ】の2つです。
【手ブレ】:撮る瞬間、カメラを持っている手がうごいてしまう事によって起こる。(カメラ自体がう動くので写真全体がブレる)

【被写体ブレ】:撮る瞬間、被写体が動いてしまう事によって起こる。(動いたものだけブレる)

手ブレの防止方法
手ブレの防止方法は『カメラをしっかり固定する』です。
自分の振動がカメラに伝わって起こるので、自分の体を三脚など、土台の変わりと考えましょう。
また、手ブレを防ぐシャッター速度の目安は使用するレンズの焦点距離分の1( 1 / 焦点距離)です。
例:50mmレンズなら1/50秒、70mmは1/70秒、200mmは1/200秒。

平均として目安の数値だから、そこを基準と考えましょう。

また、レンズやカメラにブレ補正機能(VR)が付いている場合は積極的に使いましょう。
被写体ブレの防止方法
被写体ブレ防止方法は『シャッター速度を速くする』です。
上記の『動きを止める表現をする』で述べたのと同様に、動いている人や動物、車などはシャッター速度を速くします。
目安は1/500秒 ~ 1/2000秒 くらいです。

シャッター速度の応用編
シャッター速度を応用して撮影している写真は数々あります。
代表的なものを少し紹介します。
被写体に合わせたシャッター速度を選ぶ事によって世界観が広がります。





被写体に合わせてシャッター速度を使い分けよう
シャッター速度のまとめ
●まずは被写体の動きを出すのか止めるのか、どう表現するかを決める。
●シャッター速度は遅いとブレやすく、速いとブレにくい。
●手ブレを防ぐにはレンズ焦点距離の数値とカメラの固定を意識しよう。
●被写体ブレを防ぐにはシャッター速度を上げる。
●ブレは必ずしも失敗ではなく、意図したものは成功。
●被写体に合わせたシャッター速度で表現のバリエーションを増やそう。
シャッター速度で写真の可能性は格段に広がる
『動きの表現』であるシャッター速度を使いこなせば、
目で見えなかった世界を表現できるので写真の可能性が格段に広がります。
シャッター速度はいろんな条件や機材との組み合わせで応用の幅は広がります。
シャッター速度を使いこなして新しい世界をどんどん表現してみてはいかかでしょうか。
見た人をアッと驚かせる写真を撮れたら嬉しいですよね。

同じものを撮る時でも、どう表現するか想像力を働かせてみよう。
最後に ~プロはこう考える~

最後にプロが使うシャッター速度の考え方や活用方法を伝えるよ。
プロの現場では、まず『動きを止める表現』の撮り方を基準に考えます。
止まった写真だけ納品しても問題はありません。ですが動いた写真だけを納品してOKという場合はほぼ無いと思った方が良いでしょう。
クライアントが動いた写真のみでOKという場合ならば良いですが、それはあまり考えにくいです。
手持ち撮影(カメラを手で持つ)でブレない限界を超える場合、三脚 or 一脚は必ず持っていきましょう。
日頃から意識して、どれくらいのシャッター速度でブレないかを把握しておきましょう。
手持ち撮影で三脚などが使えない場合、
なるべく自分のブレない限界値まで他の設定や環境を合わせる必要があります。


手持ち撮影の時は使うレンズによって、ブレないシャッター速度の限界値を知っておこう。
逆に明るすぎる時もありますので、その時の条件によってどう対応するかを決めます。

仕事撮影で、他のカメラマンと差別化するなら、まず動きを止めた写真を撮影し、その後に動きのある写真を撮ってみて『こういうのはいかがですか?』と提案すると良いでしょう。※動きの表現ができる場合に限ります
持っておきたいアイテム
上の絵でもありますが、アイテムとして持っておくと便利なのは以下の二つ。
・ストロボ:カメラに直接取り付けできるクリップオンのストロボは様々な使い方ができるのでとても便利です。
・NDフィルター:レンズに取り付けるサングラスのようなもので、明るすぎて光を減らしたい時、屋外でも遅いシャッター速度を使いたい時にとても役立つアイテムです。
特にストロボに関しては
- 被写体を明るくさせる
- 部屋全体を明るくさせる
- 遅いシャッター速度でも動きを止めたように撮れる
など、その他いろいろ利点もあるので、仕事の撮影をする場合は持っていると良いでしょう。
ピンチをチャンスと考える
プロの考え方として、条件的にピンチの時でも撮影方法で出来る限りカバーをします。
- 雨でも晴れたように撮る(シャッター速度を遅くして雨を写さなくする)
- 雨を光らせて光の粒の演出として表現する(ストロボと組み合わせる)
- 日中でも夜のように撮ったり、逆に夜でも日中のように撮る(ストロボと組み合わせる)

など、条件が良くない時でもそれを感じさせなかったり、逆に利用して好条件に持っていく考え方を持つことが大切です。

〇〇だから諦める、よりも〇〇は逆に活かせないか、と考えてみよう。
シャッター速度の調整で様々な世界を表現して、自分ならではの芸術を楽しみましょう。
目で見ている以上の世界を表現できるようなカメラマンになれば、仕事にもしっかりと活きてきます。

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