自分が撮った写真とプロが撮った写真を見比べると、同じように撮ったつもりなのに
『う~ん・・何か違う・・』と思ったことはありませんか?
絵画のように美しく浮き出た写真。美しいボケ味やシャープさは写真の印象を左右します。
今回はF値(絞り)とは何か、
どうしたらバランスの良いキレイなボケ味やシャープさで撮れるのかをお伝えします。
F値を理解してプロに近い写真を撮れるようになりましょう。
最後に【プロのF値の決め方】もお伝えします。写真を仕事にしたい方は最後まで読んでみてください。
絞り(F値)は写真をボカす第一条件
カメラを始めると必ず直面するF値(絞り)というフレーズ。F値とはいったい何のことでしょう?
『絞り(F値)は被写界深度(ピントの合う範囲)を調整するもの』であり、簡単に言うとボケる範囲の数値です。
レンズには光の量をコントロールする「絞り」という羽のような部品があります。
そして「F値」は、絞り羽の拡がりを調整する数値です。(下図参照)
F1.4=F/1.4 Fはレンズの焦点距離の事、1.4などの数字で割った値が開口部の直径という意味
例:50mmレンズでF1.4だと 50 ÷ 1.4 = 35.7mm
※イメージで簡単に頭に入れておきましょう。
● 数値が小さい=絞りを開ける(ピントが合う範囲の数値を小さくする)【ボケる部分が広い】
● 数値が大きい=絞りを絞る(ピントが合う範囲の数値を大きくする)【ボケ味る部分が狭い】
という事になります。
※下の写真は同じ場所から、絞り値を変えて撮影したものです。
ボカしたい時はF値を小さく、ボカしたくない時はF値を大きく。と覚えてね。
絞り(F値)のもう一つの特徴
F値はボケ味など被写界深度の調整をする以外に、もう一つ特徴があります。
それは『明るく撮れる』です。
絞りを開けると光を多く取り込めるので、明るく撮影する事が可能です。
暗い条件下なのにシャッター速度を落とせない、ISO感度を上げられないなど、スナップ撮影ではよくある事です。
そんな時はF値を限界まで開けて(開放といいます)撮影する選択をして良いでしょう。
その場合はもちろんピントを繊細に見ないといけませんし、許容範囲の被写界深度は考えましょう。
せっかく明るく撮れたのにどこにもピントが合っていないのは悲しいですからね。
良いボケと悪いボケ(ボカしすぎ注意!)
F値の仕組みを知ったばかりの人は、ボカしすぎた撮影をしてしまいがちです。
日本人は特に背景がボケた写真を好む傾向があるので、
絞りを開けてボカす事ばかり考えてしまうからです。
カメラのモニターで見たときは良い感じに撮影できたと思えても、
パソコンなどの大きなモニターで確認した時、
肝心な所までもボカしすぎている事が意外とよくあります。
悪いボケ(バランスが悪いボケ味)と良いボケ(バランスの良いボケ味)を比較してみましょう。
下の写真は魚定食セットを撮影したものです。
セット部分(メイン以外)も見る人に伝えないといけないため、
メインの魚だけピントを合わせた雰囲気重視の撮影はNGです。
多少の雰囲気を残しつつ、メイン以外も分かるようにF値を調整しましょう。
ボカす場所、ボカす範囲を考えながら撮影することが重要です。
慣れないうちは【F5.6を基準にして】、そこから数値を小さくするのか、
大きくするのかを決めていくと良いでしょう。
※詳しくは最後に~プロはこう考える~をご覧ください。
ボカしすぎると後で取り返しがつかないから気を付けよう
ボケ味を生み出すのはF値だけではない
ボケ味はF値だけで決まるものではありません。
なぜなら被写体以外に背景や前景があるからです。
では背景や前景がなぜボケ味に影響するかというと、
理由は【カメラとの距離】にあります。
背景や前景を入れて撮る時はそれらとF値をセットで考える必要があります。
それぞれの距離とF値をセットで考えよう
F値以外のボケの要素
F値以外にボケ味に関するものは以下になります。
●カメラと被写体との距離
●被写体と背景、前景との距離
●焦点距離(レンズの中心からセンサーまでの距離。レンズを変えることにより変わる)
F値も合わせるとボケる要素は4つと覚えておくと良いでしょう。
F値のまとめ
F値の特徴は以下の通りです。ポイントを抑えて思い通りに撮影しましょう。
●F値の数値が小さい(ボケる範囲が広い) ⇔ F値の数値が大きい(ボケる範囲が狭い)
●F値の数値を小さくする(絞りを開ける)ほど明るく撮れる
●ボカしすぎには注意!
F値の特徴を抑えよう
ベストなF値を考える
撮影には様々な意図があるので、絶対的なF値の正解がある訳ではありません。
ですからベストのF値を求めるには【被写体の特徴を捉える事】が最も重要になります。
大人数の集合写真ならば、全員にピントが合っていないといけませんし、
キラキラしたネオンを幻想的にボカした写真にするならば絞りを開けないといけません。
その為にはしっかりと被写体を観察して『どこまでピントが合っていれば良いか』を決めます。
使用しているレンズのミリ数(焦点距離)で使用したいF値でどこまでピントが合うのかを把握する為にも、事前に練習しましょう。
見せるべき部分はボケない事が第一条件であり、それ以外をボカすかボカさないかは撮り手の判断になります。
見せたい物、見せないといけない物にはしっかりピントが合うようにしてF値を調整しましょう。
最後に ~プロはこう考える~
最後にプロはどうやってF値を決めているかを伝えるよ
プロの世界、いわゆる仕事の撮影では『ボカしてほしい』との依頼はあまりありません。
どちらかと言えばあまりボカさず、
まんべんなくピントが合うように被写界深度を深くしてほしい。という依頼の方が多いです。
特に商品撮影や建物の撮影などはF値を絞って撮影します。
理由としては『万人に見せても説明ができる写真』にする為です。
ですが中には、しっかりと説明ができて、かつ雰囲気があって浮き出るような・・・
と被写界深度の深いものと浅いものを合体させたい。という依頼も度々あります。
レンズの種類やカメラ位置など様々な条件があるので一概には言えないですが、
そのような場合はF値の決め方として基本的にはF5.6を基準に考えます。
開放F値をF1.4 ~ F16とした場合(大体の撮影はこの数値内で収まる為)の中央値がF5.6だからです。
※下図参照
基本F値を変更する時は『1段上げる』『1段下げる』といった用語を使います。
1段=1EV(明るさ)という意味です。
1段ごとの間にもF値は存在しますが、それは +1/3 ずつ細かく調整できる値です。※下図参照
上記の図の中央値F5.6を基準に考え、そこから1段ごとにF値を上げる、下げるという事をします。
心配な時はF5.6から始め下2段、上2段ずつ計5パターン撮ることをお勧めします。
ボケ味や雰囲気を出したい場合はF値は絞り、望遠レンズを使用すると良いでしょう。
またレンズやF値だけに頼るのではなく自分の足で動く、動かせるものならば自分の手で動かしてみるなど、被写体との距離も調整してみましょう。
以上の事を踏まえ、プロの世界ではボカせば良いというものではなく、
求められるF値で撮る事が必須になります。
どこまでボカすかより、どこまでピントを合わせる必要があるかで、適切なF値を導き出します。
ベストなF値で撮れるようになれたら仕事としても成り立ちます。
趣味の写真も仕事の写真もF値がばっちり決まると楽しいですよ☆
仕事の写真は大勢の人が見た時の事を考えてみてね
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